眼内レンズについて

眼内レンズとは

「眼内レンズ」とは、白内障の手術で取り除いた水晶体の代わりに眼の中に挿入する人工のレンズのことをいいます。透明で生体適合性の高い材質でできています。現在、主流の材質は、柔らかくて折りたたんで挿入できるアクリル樹脂です。

眼内レンズの進歩

眼内レンズは、手術侵襲を小さくすることと、よく見えることの2つの観点から著しい進歩をしてきました。
下記へまとめていますのでご覧下さい。

1手術侵襲を最小化し術後も安全

①丸めて挿入して眼内で開く ➡ 小切開白内障手術で安全に

眼内レンズの光学部の適正な直径は6mm前後です。すなわち、そのままだと6mmの切開創が必要になります。そこで柔らかくて透明なアクリル樹脂でできた眼内レンズが生まれ、インジェクターという器具で丸めて挿入することで3mm以下の切開創から挿入できるようになったのです。

②UVカット+ブルーライトカット

水晶体は紫外線(UV)を吸収して眼底に届かないようにする機能があります。それはUVが視力を担う黄斑に有害だからです。現在の眼内レンズにはUVカット機能が標準で備わっています。さらに、最近ではブルーライトをカットする機能が追加されています。ブルーライトとは紫外線に最も近い可視光線の中で最も波長が短い380~495nmの青色光をさし、最も強いエネルギーを持ち長期被曝により黄斑に有害となる可能性が指摘されています。

2眼内レンズに矯正機能が装備

①角膜乱視矯正 ➡ クリアな視界に、トーリック眼内レンズ

白内障手術後に角膜乱視が残ります。ある程度大きな乱視が残ると物が二重に見えたり、ぼやけて見えたりする原因になります。裸眼でクリアに見えるためには、角膜乱視に配慮した手術が必要です。

②非球面レンズ

人の水晶体は、球面レンズ形状をしています。球面を通る光は周辺ほど強く曲がる性質があるため、フォーカスが近くにきます。すなわち、図のように水晶体の部位によりフォーカスが違うため一点にフォーカスできずぼやけて見えてしまいます。この球面により生じてしまうぼやけを球面収差といいます。もともと人が持っているぼやけですが、特に、瞳が開き水晶体の周辺に光が入る薄暗い環境で影響が出ます。初期の頃の眼内レンズも球面レンズであったため球面収差を持っていました。しかし、レンズ技術の進歩により球面収差を取るレンズが作れるようになりました。これを非球面眼内レンズと言います。人の持つ水晶体の欠点をも解決してしまう眼内レンズ、「よく見える」を追求する研究心が生んだ機能です。

③多焦点機能(多焦点眼内レンズ)

多焦点機能とは一口に言えば老眼を解消する機能です。老眼とはピントが合う距離が狭くなっていく加齢変化です。メガネ・コンタクトレンズで遠くにピントを合わせると近くが見えにくくなり、老眼鏡をかけると遠くがみえにくくなるという不便な状態です。多焦点眼内レンズは、レンズの表面に光学的構造を付加してピントの数を増やすことで老眼を解消しようとして生まれたレンズです。現在、3焦点のレンズがスタンダードとなっており、5焦点のレンズも世に出始めています。いかに遠くから近くまでスムーズに見えるか?ハロー・グレアに代表される副症状が軽いか?などを目標に開発が進められ、高機能なレンズが出そろってきたところです。

あなたに合った眼内レンズは何か?

恐らくあなたが選ばなくても

  • 丸めて小さい創口から挿入できる眼内レンズ(Foldable lens)
  • UVカット機能、ブルーライトカット機能

を持つ眼内レンズが医師により選ばれるでしょう。
もし、あなたが希望しなければ

  • 乱視矯正のトーリック眼内レンズ

が選ばれるかどうかは、あなたの主治医次第です。

もし、あなたが老眼を解消することに興味を持たれたら、主治医から十分な説明を受けて理解を深めて選択してください。多くの選択肢があります。

  • 単焦点か多焦点か?

老眼解消に興味があるのに、この質問は?と思われるかもしれません。失礼ながら「多焦点」という響きに魅せられて多焦点眼内レンズを希望される方もおられるからです。次のような方は、今一度、このチェックポイントを確認しましょう。

1.手元30cmにピントが合う中等度近視の方
-3ジオプター前後の近視の方は、手元30cmにピントが合っている便利な近視といえます。老眼が進んでも裸眼で手元は見えるからです。多焦点眼内レンズの手元の見え方は、白内障が軽い頃の手元の見え方には及ばないかもしれません。
2.鏡を近づけアイメイクをされる方
-6ジオプターを超える強度近視の女性のなかには、手鏡を10~15cmに近づけてアイメイクをする方がおられます。この距離がよく見える多焦点眼内レンズはありません。アイメイクはメガネでカバーできません。
3.メガネ顔が自慢の方
若い頃からずっとメガネだったので、なじんでいるという方は、どうでしょう?メガネに頼らない生活に意義を見いだせないかもしれません。

Think: 多焦点眼内レンズのメリットは、手元30~40cmから遠くまでが、連続してよく見えることにあります。生活や仕事の90%くらいは、裸眼で便利に行動できます。ただし、食品の添加物表示など細かい字はメガネが必要かもしれません。アイメイクはメガネをかけてはできないことも考えておく必要がありますね。メガネ顔がお好きな方が多焦点眼内レンズを選ばれた場合は、プレーンのレンズにしたメガネを用意すれば良いでしょう。遠近両用メガネにはない快適な見え方を得ることができます。

  • 単焦点なら、唯一のピントをどこに選ぶか?

▶これまでがどうだったかを考える

もしあなたが、若い頃からメガネいらず(近視が無いか軽い)であったな ら、遠くにピントを合わせることをお勧めします。お出かけは裸眼で、手元を見るときは老眼鏡で、という生活に慣れているからです。

もしあなたが、老眼が進んでも手元だけはよく見える便利な近視(-3ジオプター前後)であったなら、3つの選択肢があります。

  • これまでのように、手元30cmくらいにピントを合わせる。遠くはメガネで、手元はメガネを外すか、遠近両用メガネを使用するのが、最もしっくりくる選択です。
  • 遠くにピントを合わせる。これまでと逆になりますので、慣れるのに時間がかかります。メガネなしで運転やお出かけができますが、老眼鏡が必須になります。
  • 中間距離(1m前後)にピントを合わせる。足下がよく見え、遠くも近くもぼやけはあるが、そこそこ見える。はっきり見るためには遠近両用メガネが必要。安全重視で、ご高齢の方の選択肢の1つです。

もし、あなたが不便な近視であったなら、お好きなところにピントを選んでください。なぜなら、もともと遠くも手元もぼやけて見えていた方なので、どこか一カ所はっきり見えるだけで白内障が進む前よりも便利になります。お勧めは、遠くにピントを合わせる方法です。メガネを使用せず部屋や町並みがよく見えると気分が良くなります。ただし、手鏡を近づけてのアイメイクはできなくなります。

▶ご自分のライフスタイルや仕事でよく使う距離は?どの距離を優先する?

・パソコンを使う時間が長い方
中間距離(50~100cm)がパソコンで一番使う距離です。中間距離は、お料理、楽器演奏、対面のお仕事でも重要です。しかし、同時に書類を見る(近方)、会議のプレゼンを見る(遠方)など他の距離も用いますので、メガネをうまく使う必要があります。それが不便に感じるのであれば、多焦点眼内レンズを選びましょう。

・書き物が多い方
他にも、お裁縫・編み物やスマホ作業なども手元30~40cmが重要です。同時にパソコンも使う、会議のプレゼンを見る(遠方)など他の距離も多く用いる場合は、メガネをうまく使う必要があります。それが不便に感じるのであれば、多焦点眼内レンズを選びましょう。

・運転が多い方
まず標識や車外の通行人など遠くがはっきり見えることが重要です。最近では、ナビに頼って運転することが増えており、遠近両用メガネをうまく使う必要があります。それが不便に感じるのであれば、多焦点眼内レンズを選びましょう。

  • 多焦点なら、どの多焦点眼内レンズにするか?

生活や仕事では、1つの距離だけをずっと見ていることよりも、いくつもの距離のものに目線を動かして作業していることが多いと思います。目線を動かすところが、どこもはっきり見えると、とても便利です。この連続した見え方を提供するのが多焦点眼内レンズです。上記の、単焦点眼内レンズのシミュレーションで満足できそうにない方は、多焦点眼内レンズを検討してください。
多焦点を検討する場合、どの多焦点眼内レンズにするかが重要になります。

▶現在は3焦点が主流

以前は、2焦点が主流でしたが、現在は、多くの3焦点眼内レンズが出そろい、3焦点眼内レンズが主流になりました。3焦点が、最も満足度の高い多焦点眼内レンズと考えています。どの距離も問題なくはっきり見えるといえます。最近は5焦点眼内レンズも登場しています。では、もう2焦点は不要なのかと言うと、そうではありません。多様なニーズを満たすため2焦点も存在意義があります。それがMix and Matchです。

▶Mix and Match(ブレンド法)

3焦点眼内レンズは6種類に増えましたが、誰でも手元30cmまでしっかり見える3焦点眼内レンズは存在しません。なぜなら、手元30cmを本当にはっきり見るためには、4.0ジオプター加入が必要ですが、最も近方重視の3焦点でも3.55ジオプターしか加入されていないからです。2焦点眼内レンズのなかには、4.0ジオプター加入のものがあります。手元30cmで明瞭な像を結びます。ただし、両眼にこれを入れてしまうと、中間距離がイマイチになります。そこで片眼には中間距離が強いレンズを選ぶと、脳が良いどこ取りをして、手元30cmも中間距離もよく見える状態を作り出すことができます。これが、Mix and Match(ブレンド法)です。

どのレンズにもメリット・デメリットがあります。よく理解した上での選択を強くおすすめします。
ここでは選択する際に重視するべき2大ポイントを挙げます。
  • どこがよく見えるか?
  • ハロー・グレアなどの副症状はどの程度か?

詳しい情報は豊富な多焦点眼内レンズをご覧下さい。(別サイトへ移動します)

  • 多焦点眼内レンズに向いていない方

多焦点眼内レンズを希望されても、稀に向いていない場合もあります。無理に多焦点眼内レンズを選ぶと、単焦点よりも不便になります。まず、術前に適応があるかどうかを十分に精査することが大切です。以下の方は、注意が必要です。

▶角膜の不正乱視が強い

▶瞳孔が小さい(1.5mm以下)

瞳孔が小さいと多焦点機能が十分発揮されません。むしろ、単焦点でもピンホール効果によりピントの合う範囲(焦点深度)は広がります。

▶眼底の病気がある、緑内障がある

病気の種類や程度によります。初期の黄斑前膜は硝子体手術で完治でき黄斑機能を維持できますので、適応になります。加齢黄斑変性は重症であると適応外です。軽症であると将来重症化するリスクを踏まえて「単焦点眼内レンズ+多焦点アドオン」 なら適応になります。緑内障は軽度なら適応がありますが、将来進行するリスクを踏まえると「単焦点眼内レンズ+多焦点アドオン」 がベストの選択と考えます。

▶まだコントラストが良い

白内障が軽度でコントラストの良い目は、コントラストの高い多焦点眼内レンズを選ばないと、コントラストの低下をワクシービジョン(Waxy vision、立体感が足りない見え方)として感じる場合があります。

詳しい情報は多焦点眼内レンズの不適合についてをご覧下さい。(別サイトへ移動します)

眼内レンズ選択時は、生活と仕事の物を見る距離をシミュレーションする

我々は無意識にいろいろな距離のものを見て生活しています。無意識がゆえにどの動作をするときににどのような距離感で物を見ているのかを意識するのは少し分かりづらい部分があります。。下記にそのヒントとなるよう例を挙げています。。理解しておくべき重要なポイントは、人はずっと同じ距離を見ているのではなく、いろいろな距離に目線を移しながら行動していると言うことです。多焦点眼内レンズの意義は、このどの目線もピントが合っていることにあると言えます。

ピントの合う位置に適した趣味や日常の行い

  • 遠远

3m以上例)運転、テレビ・映画鑑賞、スポーツ、散歩

  • 中間

50cm ~ 1m例)パソコン、食事、料理、お化粧、談笑、掲示板、カーナビ、ジム、美術館、楽器演奏

  • 近方

30cm ~ 40m例)読書、スマホ、書き物、お裁縫・編み物

  • 遠远
  • 中間

例)運転+カーナビ、買い物、駅、旅行・観光テニス、ゲートボール、孫の世話、カラオケ

  • 遠远
  • 近方

例)風景写真撮影、風景画、授業、カルチャースクール、卓球

  • 中間
  • 近方

例)書類を見ながらのPC作業、向かい合っての食事、書類を見ながらの対面作業

  • 遠远
  • 中間
  • 近方

例)ゴルフ、空港、披露宴などの宴会・会食、役所の手続き、銀行

あなたのライフスタイルは?

ピントの合う位置に適した趣味や日常の行いを理解いただいたら、次のようなご自分のライフスタイルを振り返っていただいて、自分に合った眼内レンズを見つけてください。

  • 年齢
  • 主な行動範囲は?
  • 仕事はなにか?
  • 車の運転をするかどうか?自転車、バイクは?特に、夜間に運転するか?
  • スポーツをするかどうか?
  • 趣味はなにか?(絵を描く、カメラ、生け花、カラオケ、編み物など)
  • パソコンは使うか?
  • 旅行が好きかどうか?

しかし、実際に体験してみないとなかなかわかりません。

ここで他で触れられていない生活の中でのvisionを付け加えておきます。人は、中間距離と遠方は交互に同時に見ています。料理然り、お掃除然り、ゴルフ・テニスなどのスポーツ然りです。この2つをメガネでカバーすることは難しいのです。

もっと具体的にイメージして眼内レンズ選択を行うことが大切です。

拙書「自分だけの オーダーメイド白内障手術」に具体的な体験を示していますので参考にしてください。

単焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズとは(保険適用)

「単焦点眼内レンズ」は、白内障手術において、保険適用となる、最も一般的な眼内レンズです。

単焦点レンズを用いた白内障手術は国民健康保険によりカバーされます。手術にかかる費用は国民健康保険の負担割合に応じた自己負担で手術が受けられるという経済的なメリットがあります。

単焦点眼内レンズ

乱視矯正眼内レンズ(トーリックレンズ)とは

乱視矯正眼内レンズ(トーリックレンズ)は、乱視を矯正できる眼内レンズです。
通常の単焦点眼内レンズと同じく、保険適用で手術が受けられるようになっています。

単焦点眼内レンズではメガネを併用することを前提とします

「単焦点眼内レンズ」では、メガネを併用することを前提とします。

焦点の合う位置を遠くに合わせた場合は、メガネなしで遠くがはっきり見えます。そのため、手元をみるとき(例えば本などを読むとき)は、いわゆる老眼用のメガネを必要とします。

逆に、ピントの合う位置を近くへ合わせた場合は、メガネなしで近くがはっきり見えますが、遠くはぼやけて見えます。つまり中くらいの近視になったことを意味します。そのため、遠くを見るとき(例えばちょっと離れてテレビを見るとき)は、近視用のメガネを必要とします。

単焦点 近くにビントを合わせた場合、遠くがばやける
単焦点 遠くにビントを合わせた場合、近くがばやける

デスクでのお仕事が多い方
読書の多い方
細かで繊細な作業の多い方

車の運転の多い方
アウトドアの多い方
ゴルフなどの多い方

さらには、単焦点眼内レンズのピントを中間距離に合わせる方法もあります。

中間距離は50 cm~1 mの距離です。お料理、PC作業、人との会話、掲示を見るときなど中間距離の作業は意外と多いのです。中間距離に合わせておくとお年寄りが足元などがよく見え安全に行動できる利点があります。ただし、中間距離に合わせると、遠くと手元はぼやけて見えますので、遠用メガネと近用メガネの両方を持つか、遠近両用眼鏡を持つ必要があります。

単焦点眼内レンズではメガネを併用することを前提とします

理事長のプロフィール

板谷 正紀(理事長)

板谷医師は硝子体手術と緑内障手術を駆使できる術者です。高眼圧を伴う眼底疾患(増殖糖尿病網膜症における血管新生緑内障など)などの複雑な症例にも両方の術式を同時に使い対応できます。長く大学で治療にあたり増殖糖尿病網膜症や増殖硝⼦体網膜症などの難治症例を得意としています。埼玉県が指定する「難病指定医(眼科)」。

■資格

  • 医学博⼠(京都⼤学)
  • ⽇本眼科学会認定眼科専⾨医
  • PDT認定医(眼科PDT研究会)
  • 屈折矯正⼿術講習修了医
    (⽇本眼科学会指定)
  • オルソケラトロジー講習修了医
    (⽇本眼科学会指定)
  • CTR講習会修了
    (⽇本眼科学会)
  • ⽔晶体再建術併⽤眼内
    ドレーン挿⼊術講習会受講
    (⽇本眼科学会)
  • ICL認定医(ICL研究会

■受賞

  • 1997年 ⽇本失明予防協会研究 助成(⽇本失明予防協会)
    京都⼤学助成会賞(京都⼤学助成 会)
  • 1998年 ジャムコン賞(ジャム コン)
  • 2007年 Young Investigator Award (Glaucoma Summer Camp)
  • 2013年 AAO Achievement Award (American Academy of Ophthalmology)

当法人で白内障手術が申し込みできるクリニック

  • はんがい眼科 「大宮駅」東口より、国際興行バス 7番「南中野バス停」下車 徒歩5分 Tel:048-681-0101
  • 板谷アイクリニック銀座 東京メトロ 銀座駅C8出口より徒歩1分東京メトロ 銀座1丁目駅5番出口より徒歩3分 Tel:048-681-0101
  • はんがい眼科新宿センタービル JR線・小田急線・京王線・東京メトロ丸ノ内線「新宿」駅西口より徒歩約5分の新宿センタービル5階 Tel:03-5381-0101