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黄斑円孔

黄斑円孔の「黄斑」は視力を司る網膜の中心

黄斑は網膜の中心に位置しています。光を感じる視細胞が一番多く詰まっている場所で、視力を司ります。黄斑は高機能であるがゆえに、病気にもなりやすいのです。黄斑が病気になるとみたいところが見えなくなります。

健康な黄斑の中心はくぼんでいる

健康な黄斑の断面(OCT画像)をみてみましょう。健康な黄斑の中心には、なめらかなくぼみがあります。言い換えると、中心は薄くなっています。このため黄斑の中心は孔が開きやすいのです。

健康な黄斑のOCT画像(断面)

黄斑円孔は視力を司る黄斑に孔があく病気

黄斑円孔のOCT画像(断面)

黄斑円孔の症状は中心暗点

黄斑の中心は最もよく見える場所であり、視力を司っています。黄斑円孔になると、スマホを見たり、人の顔を見るときに見ようと思うところの像が欠けてしまいます。中心暗点と呼びます。中心暗点のまわりに歪みを感じることがあります。また、黄斑円孔が起こり始めるときまっすぐな線がゆがんで見えることがあります。変視症です。

  • 黄斑円孔の目の見え方
    (アムスラーチャートで表現した)
  • 黄斑円孔の目の見え方
    (アムスラーチャートで表現した)

中高年の女性は要注意

黄斑円孔は、60代を中心に中高年の方に好発する眼病です。特に女性に好発します。これは、女性の方が黄斑の中心が薄いからと考えています1)。

1)Kumagai K, Hangai M, Larson E, Ogino N. Foveal thickness in healthy fellow eyes of patients with unilateral macular holes. Am J Ophthalmol. 2013 Jul;156(1):140-8. doi: 10.1016/j.ajo.2012.11.029. Epub 2013 Mar 28.

黄斑円孔は手術で治る

黄斑円孔を治せる薬は存在しません。しかし、硝子体手術という手術により開いた孔を閉鎖して治すことができるようになっています。1991年にKellyとWendelにより発表された黄斑円孔手術2)は、今や日本全国多くの施設で行われています。

2)Kelly NE, Wendel RT. Vitreous surgery for idiopathic macular holes. Results of a pilot study. Arch Ophthalmol. 1991 May;109(5):654-9. doi: 10.1001/archopht.1991.01080050068031. PMID: 2025167

黄斑円孔はなぜ起きるのか?

人の目は、加齢とともに後部硝子体剥離という変化が起きます。硝子体はコラーゲンと大量の水分を含んだヒアルロン酸からなりますが、加齢とともにヒアルロン酸の水分を含む力が衰え、硝子体の容積が減り始めます。このため、硝子体は徐々に網膜から離れていきます。硝子体が網膜から離れていく生理現象が後部硝子体剥離です。飛蚊症の原因としても知られています。後部硝子体剥離が進むとき、網膜が引っ張られて網膜のさまざまな病気が起きます。黄斑の中心部(中心窩)が引っ張られて孔が開いてしまうのが黄斑円孔です。

後部硝子体剥離の進行を示す
黄斑円孔を引き起こさずに無事進んだ後部硝子体剥離(OCT画像)
黄斑円孔が起きるプロセス
後部硝子体剥離が進むときに黄斑の中心が引っ張られて孔が開く

黄斑円孔の起き方をステージで見ていくと

黄斑円孔が起きるプロセスは、ステージ(stage)で表現されます。
ステージ1Aでは、後部硝子体剥離の進行とともに、黄斑の中心(中心窩)が引っ張られて、中心窩がさまざまなパターンの変形をきたします。この段階では、まっすぐな線が波打って見える変視症はでることがありますが、中心暗点は自覚しません。

同じステージ1でも、中心窩の外層(図では下方)が離開しますが、表面はつながっていて完全な孔にはなっていません。ステージ1Bです。ステージ1Aとの決定的な違いは、光を感じる視細胞が詰まっている視細胞層に孔が開いていることです。つまり、中心暗点が自覚されるようになります。

ステージ2からステージ4は、黄斑円孔が完全に生じた段階です。硝子体が円孔の縁についているタイミングをステージ2,硝子体が円孔から離れた場合をステージ3、硝子体が視神経乳頭からはずれ後部硝子体剥離が完全に生じた場合をステージ4といいます。視細胞層が離開している点でステージ1Bと同じであり、中心暗点を自覚します。

黄斑円孔はOCTで早期発見が可能に

片方の目に黄斑円孔が生じても、反対側の目が補ってしまい自分で気がつきにくいことがあり、以前は発見が遅れがちでした。1997年に、黄斑の断面を捉えることができるOCT(光干渉断層計)が登場して、普及とともに黄斑円孔は早期発見されるようになり、早期手術が可能になってことにより、閉鎖率(成功率)と術後の視力改善が向上しました。ステージ1で発見されることも多くなったのです。

自然に治ることもあるが稀

黄斑円孔は自然に閉じることが稀にあります。ただし、閉じて健常に近く戻る場合と、黄斑の形が変形し中心が薄くなる分層黄斑円孔(層状黄斑円孔ともいう)になり見えにくさが残る場合があります。いずれにせよ、稀にしか起こらない自然閉鎖を待つのはデメリットが大きく、早めの手術で閉鎖する方がはるかにメリットが大きいです。

第2世代OCTにより黄斑円孔が起きるメカニズムが詳細に

私(板谷医師)は世界初の第2世代OCT(スペクトラルドメインOCT)開発に参加しました。このOCTは、初代より2桁高速で3次元で観察できるとともに、解像力も高くなりました。説明に用いているOCT画像は、第2世代OCTによるものです。開発当時、プロトタイプ機で黄斑円孔を観察すると、硝子体が黄斑の中心部(中心窩)を引っ張る様子や、中心窩が変形する様子が映し出され3)、黄斑円孔が起きるメカニズムへの理解が深まりました。

黄斑円孔が生じかけているステージ1における黄斑の変化を3次元的に観察した
(文献3の図を改変し掲載したもの)

3)Hangai M, Ojima Y, Gotoh N, Inoue R, Yasuno Y, Makita S, Yamanari M, Yatagai T, Kita M, Yoshimura N. Three-dimensional imaging of macular holes with high-speed optical coherence tomography. Ophthalmology. 2007 Apr;114(4):763-73. doi: 10.1016/j.ophtha.2006.07.055. Epub 2006 Dec 20. PMID: 17187861

黄斑円孔の方は反対側の目にも起きやすい?

黄斑円孔になった方は、反対側の目にも黄斑円孔が起きやすいので要注意です。我々の研究では、5年後に12.0% 、10年後に 16.9% 、20年後に 21.9%の方が、反対側にも黄斑円孔が発症しました4)。

4)Kumagai K, Ogino N, Hangai M, Larson E. Percentage of fellow eyes that develop full-thickness macular hole in patients with unilateral macular hole. Arch Ophthalmol. 2012 Mar;130(3):393-4. doi: 10.1001/archopthalmol.2011.1427.

強度の近視は円孔から網膜剥離になることも

通常の黄斑円孔は孔が開いていても網膜剥離にはなりません。しかし、強度の近視の目は、黄斑円孔から硝子体液が網膜下に回り込んで網膜剥離が起きることがあります。「黄斑円孔網膜剥離」といいます。剥離を伴う黄斑円孔を治すには高度な手術技術が必要です。

黄斑円孔網膜剥離のOCT画像
オレンジ矢印が網膜剥離の範囲を示す。

黄斑円孔の孔を閉じる手術とは?

黄斑円孔は硝子体手術という術式でアプローチして閉じます。硝子体手術は器具が細くなり、安全性が格段に高くなりました。一番細い27ゲージは直径0.41mmの太さです。さらに、器具の出し入れする強膜層にはめるトロカールカニューラが導入され、創の挫滅や硝子体の創への嵌頓が減り、網膜剥離などの合併症がほとんどなくなりました。

硝子体手術の詳細は「はんがい眼科目のブログ」を参照ください

硝子体手術の基本イメージ図
目の中に人工房水を流して目の圧を保つ「灌流」、目の中を照らす「照明」、硝子体切除や膜剥離を行う器具の出し入れを行う「カッターポート」が基本的構成となる
  • 硝子体手術の安全性を高める
    トロカールカニューラ
  • 硝子体手術の実際

黄斑円孔手術の成功率を上げるスタンダードな手技

初期の黄斑円孔手術は、硝子体手術で硝子体を取り、目の中をガスに入れ替えて腹臥位を取ることで円孔閉鎖を促す手術で、初回閉鎖率は80%前後でした5)6)。これは5人に1人は再手術が必要と言うことです。1997年に、ドイツのEckardt先生が、黄斑表層の内境界膜をはがす手術を報告し7)、後に、この内境界膜剥離術が黄斑円孔手術の成功率を格段に高めることが明らかになりました。その成功率は、文献により92~100%とまちまちですが、再手術が必要な人が10人に1人以下になったのです。

5)Brooks HL Jr. Macular hole surgery with and without internal limiting membrane peeling. Ophthalmology. 2000;107:1939-1948.
6)Kumagai K, Furukawa M, Ogino N, Uemura A, Demizu S, Larson E. Vitreous surgery with and without internal limiting membrane peeling for macular hole repair. Retina. 2004;24:721-727.
7)Eckardt C, Eckardt U, Groos VS, Luciano L, Reale E. Removal of the internal limiting membrane in macular holes. Clinical and morphological findings. Ophthalmology. 1997;94:545-551.

黄斑円孔手術成功の決め手、「内境界膜剥離術」とは?

内境界膜は網膜表層の5ミクロン前後の薄い透明な膜です。ミュラー細胞の基底膜です。黄斑円孔手術において、この膜を剥がすと円孔閉鎖率が格段に高くなり、視力改善が良くなります5)6)。これを内境界膜剥離術と言います。透明な薄い膜であるため、染色液(ブリリアントブルーG[青]やインドシアニングリーン[緑])で染めて可視化して剥がします。剥がすための器具も27ゲージの極細です。網膜を傷つけずに内境界膜を剥がすのが腕の見せ所です。

  • ブリリアントブルーGで染めた内境界膜を剥離するイメージ図
  • 手術中動画から~ブリリアントブルーGで染めた内境界膜を実際に剥離している

27ゲージ小切開硝子体手術で日帰り手術が容易に

黄斑円孔手術は、すべて27ゲージ小切開硝子体手術で可能です。直径0.41ミリの極細器具であるため手術創の閉鎖が良好で回復が速いのです。円孔を閉鎖するためには、どうしても数日の腹臥位が必要になりますが、昼間は座って顔を下向けていただくのでも結構です。ちょうど授業中居眠りをするように。クラルスでは、下向き用枕を、職員が自作して、患者さんに無料提供しています。

手術によりどの程度視力が改善するか?

黄斑円孔が閉じると真ん中の見えない部分(中心暗点)が小さくなり視力は徐々に改善します。中心暗点がどこまで改善するかにより術後の到達する視力が違ってきます。1~3週間程度の短期で視力が1.0に回復するケースもあれば、1年かかってゆっくりと改善するが、0.7程度にとどまるケースもあります。この違いは、主に、黄斑の中心部分(中心窩)の光を感じる視細胞が、どの程度残っているかによります。視力が回復しても、歪んで見える症状(変視症)が残ることがあります。

一部に閉じにくい難症例の黄斑円孔がある

通常の黄斑円孔では、内境界膜剥離術による閉鎖率は、下向きさえしっかりやっていただければ100%です。ただし、一部に、通常の方法では閉じにくい黄斑円孔症例があります。閉じにくい黄斑円孔症例の特徴を挙げます。

  • 孔が大きい
  • 強度近視で後部ぶどう腫を発症している目
  • 古くなって萎縮が強い
  • 他の眼疾患に続発した黄斑円孔

後部ぶどう腫をもつ強度近視の目は閉じにくいうえに網膜剥離を引き起こす

後部ぶどう腫とは、眼球の黄斑を含む後ろの部分が外へ向かって膨らんで黄斑が薄くなっている状態のことです。目の中から見ると後方へくぼんでいます。この状態の目は網膜が目の壁の強膜の伸展についていけず、面積が不足して孔が閉じるために中心に向かって寄る余地が乏しいのです。
さらには、通常の黄斑円孔では網膜剥離に進展することはありませんが、後部ぶどう腫を持つ目は黄斑の網膜が強膜の伸展についていけず剥がれやすい状態にあり、黄斑円孔から網膜剥離に進展しやすいのです。

後部ぶどう腫のイメージ図
近視が強い目は40歳頃から眼球の後部が外に向かって突出してくる

閉じにくい難治症例は特殊な技術で閉じる

こうした治りにくい黄斑円孔でも閉鎖することができる特殊な手術技術があります。

  • 初回手術の場合➡「内境界膜翻転術」
  • 再手術の場合➡「内境界膜自家移植術」

限られた上級硝子体サージャンにしかできない特殊な手術技術になります。

「内境界膜翻転術」も「内境界膜自家移植術」も、共通する考え方は、円孔に内境界膜をかぶせることで、網膜のグリア細胞が移動する足場をつくり円孔閉鎖を促進することです。孔が大きくないとガスで抑えるだけで円孔の両側が寄ってグリア細胞が両端を接着できるのですが、円孔が大きいと両端が離れていてグリア細胞が橋渡しできないので閉じにくいと考えられます。そこで、円孔のなかに内境界膜を埋め込むか、かぶせるかすると、これがグリア細胞の足場となって閉じやすくなると考えられています。

内境界膜翻転術とは?

治りにくい黄斑円孔の初回手術に行います。黄斑円孔周囲の内境界膜を全部取らずに、一部を円孔の中に埋め込んだり、かぶせることにより、閉鎖のための足場とする方法です。網膜のグリア細胞が足場を伝って移動して円孔閉鎖に働くと考えられています。

内境界膜翻転術のイラスト
内境界膜翻転術により円孔閉鎖を得た大きい黄斑円孔の症例
55歳女性、視力は画像の中に示す。円孔が大きいため内境界膜翻転術を行った(2017年9月7日).
円孔は閉鎖したが、術後2週間では黄斑の中心(中心窩)は薄く、視細胞の健康を示す3本のラインが認められない。1年以上の時間をかけて3本のラインが再生し中心窩の厚みが正常に近づいた。それとともに矯正視力も1.0に回復した。

内境界膜自家移植術とは?

初回手術で円孔を閉鎖できず再手術が必要になったケースで用いる特殊技術です。黄斑円孔の周囲には内境界膜は残っていません。そこで、内境界膜が残っている部位から、適度な大きさの内境界膜移植片を作成します。作成した内境界膜移植片を、黄斑円孔にかぶせるように固定します。

内境界膜自家移植術のイラスト
内境界膜自家移植術により円孔閉鎖を得た再手術の黄斑円孔網膜剥離
63歳(手術当時)女性。すでに内境界膜剥離術は施行されている状態であったため、内境界膜自家移植術を行った(2019年10月24日)。黄斑円孔は閉鎖し、術後3ヶ月で黄斑部の剥離もほぼ消失した。

まとめ

黄斑円孔は手術で治る病気です。難症例にも効果がある手術方法が編み出されてきています。最も大切な見つめる部分が障害される黄斑円孔ですが、早めの手術を受けて、少しでも高い視力を取り戻しましょう。

こちらでも詳しく取り上げています。
はんがい眼科の「目のブログ

執筆者

板谷 正紀(理事長)

板谷医師は大学で培ってきた硝子体手術と緑内障手術の技術を用いて、通常症例から難症例まで治療いたします。近視と乱視を矯正し裸眼生活を実現するICL手術や、近視・乱視・老眼を矯正し裸眼生活を実現する多焦点白内障手術の高い技術と深い経験を持っています。患者様の求めを理解して最高の提案と結果を出せるように常に全力で臨んでいます。

■資格

  • 医学博士(京都大学)
  • 日本眼科学会認定眼科専門医
  • PDT認定医(眼科PDT研究会)
  • 屈折矯正手術講習修了医(日本眼科学会指定)
  • オルソケラトロジー講習修了医(日本眼科学会指定)
  • CTR講習会修了(日本眼科学会)
  • 水晶体再建術併用眼内
  • ドレーン挿入術講習会受講(日本眼科学会)
  • ICL認定医(ICL研究会)

■経歴

1990年
京都大学医学部卒業
1996年
京都大学医学部附属病院助手
1997年
米国USCドヘニー眼研究所留学~Visiting Assistant Professor
2000年
神戸市立中央市民病院眼科副医長
2003年
京都大学医学部附属病院眼科助手
2005年
京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学講師
2009年
京都大学医学部附属病院眼科特定准教授
2013年
久留米大学医学部眼科学講座准教授
埼玉医科大医学部眼科教授
2017年
埼玉医科大学客員教授
はんがい眼科院長
2019年
医療法人クラルス理事長
2020年
板谷アイクリニック銀座院長