制度パート7
多焦点眼内レンズを取り巻く制度がわかりにくくなっていますので説明いたします。
があります。
に分けられます。これでもわかりにくいですね。それぞれ詳しくみていきましょう。
厚生労働省の薬事承認を受けるには、メーカーによる国内での治験が必要になります。治験を経て厚生労働省の薬事承認を受けたものが、国内承認の眼内レンズです。そのほとんどは米国のメーカーによるものです(AlconとAMO)。一方、ヨーロッパ(EU)の眼内レンズは、国内で治験を行ってきていません。このため、日本国内の薬事承認を受けたEUの多焦点眼内レンズはなく、これを用いる多焦点白内障手術は、自由診療になります。実際、これまで医師の個人輸入によるEUの多焦点眼内レンズによる治療が行われてきました。では、なぜ国内承認のものがあるにもかかわらず、わざわざ輸入して用いられてきたかと言いますと、EUには、国内承認よりも高機能の製品があることや、さまざまな優れた個性を持つ製品があるためです。選択の幅が広いとも言えます。下記表で各多焦点レンズを国内承認(青枠)と未承認(緑枠)で色分けして示します。未承認のものを含めると選択肢が一気に広がることがわかります。
多焦点眼内レンズ分類(■国内承認、■国内未承認)
3焦点 | ![]() |
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3焦点EDOF | ![]() |
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EDOF | ![]() |
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低ハロー・グレア | ![]() |
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屈折型 | ![]() |
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個性的な2焦点 | ![]() |
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ピンホールIOL | ![]() |
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アオドン多焦点 | ![]() |
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コロナ禍で混乱するなか、2020年4月より多焦点眼内レンズの選定療養制度がスタートしました。選定療養はとは、治療において初めて認められた混合診療と言えます。すなわち、白内障手術費用は医療保険でカバーされ、多焦点眼内レンズはメガネが自費であるのと同様に自費になるという制度です。より身近に多焦点眼内レンズを選べるようになったと言えましょう。しかし、反面、適応のない目に多焦点眼内レンズが選ばれたり、正確性の足りない手術行程のため多焦点眼内レンズの性能が十分発揮できなかったり、変な見え方になるリスクがあるとも言えましょう。特に、選定療養では乱視精査に優れる3次元前眼部OCTや手術の精度を高めるために用いられる白内障手術ガイダンスシステム、レーザー白内障手術、ORAシステムが認められていません。また、万が一、眼内レンズの度数がズレて入れ替えが必要になっても、その費用は自費になります。その意味で、多焦点眼内レンズの選定療養はミニマムの多焦点白内障手術と言えます。また、レンズの選択は国内承認のものに限ります。
自由診療の多焦点白内障手術は、多焦点眼内レンズの性能を発揮するためのフルパッケージの手術と言うことができます。以下は、当院の考え方です。
1で説明しましたように、国内承認と未承認を問わず、自分にマッチしたレンズを選ぶことができます
パート3~5で説明しました先端の検査機器、手術機器、器具をフルに用います。
予算とマッチングで選択していただくのが良いと思います。国内承認のレンズの中で、ご自分の希望に合うレンズがあれば、選定療養でも良いと思います。ただし、選定療養の限界は知っておくべきですし、入れ替えのリスクも知っておくべきです。予算的に余裕があり、より確実な成果を望まれるなら自由診療が望ましいと思います。ご自分の希望に合うレンズが、EUのレンズしかなかったら自由診療が必要になります。ご自分にとって、何がいちばん大切で、何が妥協できるかを吟味して納得のいく選択をしていただければと思います。