多焦点白内障手術に期待できることパート1

はじめに

どこもかしこもはっきり見たいというのは、人が誰しも持っている願いだと思います。「これまでどおり仕事を続けてゆきたいが見えにくくて不便になってきた」「快適な生活を続けたい(運転、スポーツ、旅行、他)が不便になってきた」など、人はいろいろな原因で年齢とともに見えにくくなり、見え方の不便さが進み仕事や生活に支障を感じるようになります。幸い、目の病気がなく視力が良くても老眼が進みみえにくくなってきます。もともとある近視や遠視もみえにくさの原因になっています。角膜のひずみである乱視も見えにくさの原因であり加齢とともに変化します。ある年齢で白内障が無視できなくなったとき、白内障手術により、白内障だけではなく、みえにくさの原因である近視・遠視、乱視と老眼まで治療できる方法があることをご存じでしょうか?それが、多焦点眼内レンズを用いた「白内障手術+屈折矯正手術+老眼治療」(以下、「多焦点白内障手術」)です。

この治療に成功する鍵は、「レンズとのマッチング」と「精度の高い白内障手術行程」にあります。目と多焦点眼内レンズのマッチングと精度の高い白内障手術行程は、パート2~5で詳しくお伝えします。パート1では、多焦点白内障手術に期待できることをお伝えしたいと思います。白内障手術は、これからのご自分の人生が変わるほど影響が大きい治療です。多焦点眼内レンズと手術法の選択はこれからの生き方を選ぶことと言っても過言ではないと思います。成功の指標の一つは満足度です。満足いく手術にするために、メリット、デメリットを含めて十分な知識を持って選択していただきたいと願います。

白内障手術と多焦点白内障手術で期待できること

白内障手術に期待できること

1矯正視力が改善する

水晶体の加齢変化で白内障が進むと光が水晶体の濁りにさえぎられて眼底の黄斑に届かなくなり視力が落ちていきます。白内障手術は、この濁りがなくなり透明な眼内レンズに置き換わりますので、黄斑に光が届くようになり、矯正した視力は改善します。黄斑が健康なら正常な矯正視力になります。

2不快な見え方が解消する

白内障が進むと視力が落ちるだけではなく「まぶしい」「かすむ」「ものが2,3重に見える」「薄暗いところで見えにくい」「近視がどんどん進む」などの不快な症状が初期の頃から自覚されることがあります。こうした症状は、特に運転で問題となりやすいのです。強い日差しの中の運転、暗いトンネルの中での運転、夜間の対向車のまぶしさ、を想像いただくとわかりやすいかもしれません。さらに進むと、仕事や生活でも支障が出てきます。白内障手術は、こうした不快な症状を一網打尽にしてスッキリ見えるようになります。


【日差しのまぶしさの例】

【夜間運転のまぶしさの例】

【かすみ】

【薄暗いところで見えにくいイメージ】

【白内障による乱視】何重にも見えるのが特徴

3不便な近視や遠視が治る

もともと近視が強い方は、遠くはもちろん手元もぼやけます。強度近視の方は不便な分厚いメガネになりコンタクトレンズが手放せません。近視の程度に左右差が強いと不同視が起こりメガネでは対応できないことがあります。遠視が強いと遠くも手元もぼやけますので、遠近両用メガネが手放せません。眼内レンズの度数を選ぶことで、正視(遠視でも近視でもないこと)でも、快適な近視(手元30~40cmにピントが合う近視)にすることができます。

4正乱視が矯正できる

乱視と言えば正乱視というくらい多いのが正乱視です。正乱視は規則性のある単純な乱視ですが、ものが2重に見えたりぼやけたりする原因になります。正乱視とは、角膜のカーブが強い(屈折力が強い)ところと弱い(屈折力が弱い)ところがあり、必ず軸があります。例えば、直乱視はいちばんカーブが強い軸(強主経線)が時計の12時と6時を結ぶ縦の線であり、倒乱視の強主経線は3時と9時を結ぶ横の線です。そして、強主経線は斜めであることも多いのです(斜乱視)。この単純な屈折力の強弱を眼内レンズ上で打ち消すように設計されたのがトーリック眼内レンズです。新しい眼内レンズには、すべてトーリックタイプがあります。うまく乱視を矯正できるとぼやけがないシャープな見え方になります。

白内障手術に期待できないこと

若い頃そうであったように、どこもかしこもよく見える快適な見え方は通常の単焦点眼内レンズでは実現できません。たとえ近視があっても若い頃はメガネやコンタクトレンズを使えば、見たいところがはっきり見えました。この快適な見え方は老眼により失われます。そして、通常の単焦点眼内レンズを用いた白内障手術でも、老眼は治らず、狭い範囲しかピントが合いません。若い見え方とも言える遠くから近くまで広き範囲がはっきり見える快適な見え方を取り戻すのが多焦点白内障手術です。


【単焦点眼内レンズの見え方】ピントが合っている距離ははっきり見えますが、それ以外の距離はぼやけて見えます。つまり、はっきり見える世界(明視域)が狭いのです。

多焦点白内障手術に期待できること

多焦点白内障手術は、白内障手術に期待できることは同じように期待できます。それに加えて、老眼も治せるのです。つまり、メガネに頼らなくても裸眼でどこもかしこも見える視界を期待することができます。

  • 1.視力、屈折異常(近視、遠視、乱視)を矯正できる。
  • 2.老眼が治るい

どこもかしこもピントが合いはっきりと見えます。これは若い頃は当たり前だったことです。そういう意味では目が若返るとも言えましょう。次に、どこもかしこもはっきり見えることの意義を考えてみましょう。


【単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの見え方の違い(イメージ)】

多焦点白内障手術の成功がもたらすもの

1どこもかしこもはっきり見える(老眼が治る)ことに意味がある

まず、日々の行動を振り返ってみましょう。駅や買い物など何気なく行っている行動には「ものを見る距離」があります。例えば、下記の駅のシーンではスマホを手に案内板を見ながら目的地に向かっていきます。すぐ近くにある案内板(中間距離)や離れた案内灯(遠方)を見ながら歩き、時にスマホで時間や時刻表アプリで電車の時間を確認したりします。日常のありふれた行動の中に、手元(スマホ距離、30cm~40cm)、中間距離(50cm~100cm)、遠方とさまざまな距離に目線を移しながら行動しているのがわかります。つまり、人の行動には、この3つの距離が常にはっきり見えることが必要なのです。そう、若い頃は、これがあたりまえにできたのです。40歳を越えるころからだんだんはっきり見える世界(明視域)が狭くなっていくことに気がつき、不便さを感じますが、ゆっくり進むため不便さにも慣れていく。これが老眼です。近視や乱視の強い方でも、若い頃はメガネやコンタクトレンズを使えば、どこもかしこもはっきり見えました。多焦点眼内レンズは、裸眼でどこもかしこもはっきり見えることをめざす治療なのです。


【日常の行動におけるものを見る距離】日々の行いの中で、近く、中間距離、遠くを目線を移しながら一緒に見ていることがわかります。

23つの距離がはっきり見えると生活で何が取り戻せるのでしょうか?

以下に我々の日常を振り返ってみましょう。日常の行いで大切なことは、遠くから近くまではっきり見えていることです。我々は、いろいろな距離に瞬時に目線を移しながら行動しているからです。

安全に行動できる(Safetyゾーンの獲得)

街を歩くことを想像してみてください。近づいてくる人や自転車、看板、標識、お店のショーウインドウ、歩道の段差、手元にはスマホ、挙げきれないほどのさまざまな距離もものに忙しく視線を移しながら、安全性を無意識に確保しながら歩いています。ぼやけていると、ぶつかったり、転倒したり、探していたお店を見逃したりすることは想像に難くありません。どこもかしこもはっきり見えることは、実は安全な生活に必要なことなのです。

車の運転が安全(Drivingゾーンの獲得)

安全と言えば、特に車の運転は、安全第1です。人を轢いてしまっては人生が変わります。信号、標識、前を走る車、右折時の対向車、横断歩道の子供やお年寄り、ナビ、スピードメーター、ガソリン残量。運転もさまざまな距離に目線を移し、安全性を確保しています。歩く以上に複雑な動作をして集中していますので、目線の移動は瞬時です。どこもかしこもはっきり見えることが有用なのは想像に難くありません。

仕事に便利(Workingゾーンの獲得)

仕事は千差万別ですので、ご自分の仕事をイメージしてみる必要があります。多いのはオフォスワークですね。デスクワークではコンピューターと手元の資料やスマホを見るかもしれません。ミーティングや会議では、遠方のスライドを見ながら手元でメモを取ります。さまざまな距離にいる同僚の顔をはっきりみたいですし、1対1の面談は中間距離です。営業の方は、車の運転、面談、資料供覧など、さまざまな距離を使います。

スポーツが便利に(Sportsゾーンの獲得)
球技には必須

テニス、野球、卓球などの球技は、相手(遠方)から近づいてくる球を目線で追い50cm~1mの中間距離で打ち返すという動作を瞬時に行っています。これには遠くから中間まで連続してはっきり見える多焦点眼内レンズが便利です。

ゴルフが便利に

1~1.5mのゴルフボールを打ち、遠くに飛んでいくボールを目で追います。カートの乗り降りは中間距離、手元でスコアも付けます。

ランニングにも必要

ランニングは人とぶつからないように走るために広い距離がはっきり見えていた方が楽です。最近は、健康管理機能の付いた腕時計で脈拍や時間をチェックしながら走る人が増えましたので近方もはっきり見える必要があります。

趣味が便利に(Hobbyゾーンの獲得)
カメラ撮影

風景や街の写真を撮影するときは、遠くの被写体と近くのファインダーがはっきり見える必要があります。

絵を描く

風景や人物は遠方、カンバスは中間から近方になります。

旅行が楽しめる(Travelゾーンの獲得)

初めての土地に行くとき、スマホの地図、標識、目印になる建物などさまざまな情報をたよりに目的地に向かいます。飛行機に乗る、電車に乗る、バスに乗る、車を運転するなど、さまざまな交通機関を利用します。観光地を巡るとき、手元のガイドと説明の掲示を見ながら観光します。初めての土地では、遠くから手元まで、さまざまな情報を忙しく目で追い行動するのは容易に想像できますね。

家事(Houseworkゾーンの獲得)
料理

まな板の上の野菜、火にかけた鍋など50cm~3mの距離を目線を移しながら料理をします。時に、調味料や冷凍食品の説明書きを見ます。

掃除

部屋の中を見渡して、汚れたところを探しながら掃除をします。

まとめ

多焦点白内障手術は、生活の多くのシーンで快適な見え方を手に入れる手術と言えます。ご自分にとって特に重要な行いを思い浮かべ、自分に合った多焦点眼内レンズを選んでいくことが大切です。