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緑内障手術

緑内障の外科的治療の基本的考え方

緑内障の外科的治療にはレーザー治療と緑内障手術の2つがあります。レーザー治療は数分で完了し普段と変わらない生活を送りながらできますが、効果としては、緑内障点眼1剤分の効果を期待する治療です。状況によってうまく使うと患者さんの負担が少なく有効ですが、効果は限定的です。緑内障手術は、すべて日帰り手術で可能ですが、術後感染を防ぐために自分でのシャンプーが1週間できないなどの生活制限があります。緑内障手術は、術式を選べば、必要な眼圧まで下げることが可能であり、最後の砦となる治療と言えましょう。緑内障の原因と視野障害の重症度によりレーザー治療と緑内障手術をうまく使い分けます。

レーザー治療

選択的レーザー線維柱帯形成術:SLT

目の中の水分である房水は、隅角に存在する線維柱帯とよばれる、いわばコーヒーのフィルターのような網目構造をした膜を通って眼の外の静脈に流れ出ます。この線維柱帯の通りが悪くなると眼圧が上がると考えられており、実際、後述する線維柱帯を切る手術(線維柱帯切開術)により眼圧は下がります。「選択的レーザー線維柱帯形成術」は、線維柱帯を焼けない程度の弱いパワーで刺激して房水の通りを良くする治療です。期待できる眼圧下降効果は術前の眼圧にもよりますが3~5mmHg程度です。つまり、緑内障点眼1剤分の効果は期待できるのです。点眼を増やすか、選択的レーザー線維柱帯形成術を行うかの選択肢があるのです。

特に、すでに点眼薬が多くて増やすのがたいへんな方、点眼薬の副作用が出やすくて点眼薬を増やせない方などには、強い武器になります。ただし、効果があまり見られない方もいます。効果があっても2年程度で効果がなくなってきますが、繰り返しできる治療ですので大丈夫です。3~5分程度の治療で痛みはありません。手術と異なり、いつもの生活を続けながら治療をできますので、うまく使えば緑内障管理に役に立ちます。

レーザー虹彩切開術

閉塞隅角緑内障(狭隅角)を治療する方法です。黒目(虹彩)の根元にレーザーで孔を開けて房水の迂回路を作ります。房水が瞳孔を通りにくくなり虹彩の後ろに貯まると虹彩が前方に膨隆して隅角が狭くなります。急に隅角が閉じてしまうと急性緑内障発作を起こします。レーザー虹彩切開術は、急性緑内障発作を予防できます。しかし、隅角が徐々に投じていく慢性閉塞隅角緑内障のなかにはレーザー虹彩切開術では進行を食い止められない症例があります。隅角を開く効果は白内障手術の方がはるかに大きく、白内障手術で閉塞隅角緑内障を治療する緑内障専門医が増えています。

レーザー虹彩切開術

緑内障手術

緑内障手術は、房水が通る線維柱帯を治療して生理的な房水流出システムを活性化させる方法と、全く新しい房水流出の通路を作る方法に大きく分かれます。緑内障の病型や重症度により使い分けます。

線維柱帯への手術

目の中の水分である房水は線維柱帯と呼ばれるフィルターを通った後に集合管を経て目の外の静脈へと流れ出ていきます。線維柱帯の通りが悪くなると目の中に房水が溜まりすぎて眼圧が上昇します。この線維柱帯を切ったり、焼いたり、細いチューブを留置したりして線維柱帯の通りを良くして、本来の房水の流れ出るしくみを生かして眼圧を下げる治療の総称を「生理的房水流出路再建術」といいます。もともと日本は故永田誠先生(京都大学)のご尽力で「線維柱帯切開術」が広く普及していましたが、最近、線維柱帯にアプローチするさまざまな機器・器具の開発がさかんで手術法の選択肢が増えています。現在行われている手術を挙げますが、目の外から切るAb internoと目の中から治療するAb externoに分けられます。

線維柱帯切開術

永田先生がドイツで学び日本に普及させた古典的方法で何十年もの間国内のスタンダードであった生理的房水流出路再建術です。技術的に難しく経験が必要なこと、手術時間がかかること、白目の結膜を切るため後述する濾過手術に影響すること、線維柱帯は残ることが多く閉じてしまうなどの問題がありました。

線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
トラベクトーム

トラベクトームという名称の機器を使い線維柱帯を電気熱で焼却切除していく方法です。目の中から行います。白目を切らなくても良い、治療した範囲の線維柱帯が無くなるなどの長所があります。

トラベクトーム
カフークデュアルブレード

トラベクトームと似ていますが、電気を使わず、二枚刃で線維柱帯を切り除く方法です。目の中から行う。白目を切らなくても良い、治療した範囲の線維柱帯が無くなるなどの長所は同じです。

カフークデュアルブレード
iStent®

インプラント手術です。とても小さな管を線維柱帯に差し込みます。房水はiStentを通ってシュレム氏管内へ注ぎ出ます。白目を切らなくても良い長所は中から行う手術と同じです。線維柱帯を切りませんので、シュレム氏管が生理的な状態に保たれることが期待されます。

カフークデュアルブレード

濾過手術

濾過手術とは「生理的房水流出路再建術」と異なり、全く新しい房水の流出路をつくる手術です。長い歴史があり世界のスタンダード手術になっている線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は、房水を白目の結膜の下に導き出します。すると結膜は房水で膨らみ房水を吸収します。この膨らみを濾過胞と言います。濾過胞は3ヶ月以内に成熟します。濾過胞をつくり眼圧を下げる手術を総称して「濾過手術」と呼びます。現在国内で行われている濾過手術は次の3種類があります。

線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)

眼内と結膜(白目)下の間にバイパスとなるトンネルを作成して、眼内の水(房水)を結膜の下に排出します。すると結膜は袋のようにふくらみを形成し、3ヶ月ほどで濾過胞と呼ばれるしっかりした袋が形成されます。濾過胞から房水が吸収されて眼圧が下がります。眼圧下降効果が最も高い手術です。

トラベクレクトミー

この手術の最大のハードルは生体が持つ傷を治す働き(創傷治癒反応)です。生体は創傷治癒で房水の出口を塞いでしまおうとします。塞がってしまわないように十分な房水の流れを作ることが成功の鍵です。一方で、流れすぎても過剰濾過と言われる問題が生じて、浅前房、低眼圧黄斑症などのトラブルが生じます。目は低すぎる眼圧にも弱いのです。つまり、流れが多すぎても少なすぎても問題となる糸を針に通すような難しい手術なのです。この問題をクリアするために、房水の出口をナイロン糸数本で縫って流れを抑えておき、術翌日以降ナイロン糸をレーザーで1本ずつ切って徐々に出口を緩めて眼圧を下げていきます。スーチャーライシスと呼ばれます。スーチャーライシスのタイミングが重要なのです。私は、術後7~9mmHgの眼圧になることをめざしています。しかし、どんなに慎重に進めても下がりすぎることも避けられません。低い眼圧に対する目の反応は個人差がありますが、5mmHg以下になるとトラブルを生じやすいため、逆にナイロン糸で出口を縫合して眼圧を上げる処置を行います。手術では眼圧が下がるしかけをつくり、術後の管理で、時に苦労をしながら良い濾過胞を作り上げます。

房水の出口の裁合とスーチャーライシス
ニードリング

良い濾過胞ができても、10%程度の方は数ヶ月で眼圧が上がってきます。その原因は、遅発性の創傷治癒反応により房水の出口に瘢痕膜が形成され出口を塞いでしまうからです。この場合は、まず針で出口を切り開きます。針のことをニードルといいますので、ニードリングといいます。

ニードリング

ニードリングで一旦眼圧が下がり濾過胞が甦りますが、ニードリングをしても房水の出口を覆う瘢痕膜が厚いとすぐに塞がってしまう場合もあります。この場合は、濾過胞を開いて直視下で瘢痕膜を取り除き房水の出口を開放します。濾過胞再建術と言います。

濾過胞は時間とともに眼圧を下げる機能を失っていきます。ニードリングや濾過胞再建術で濾過胞のメインテナンス行い可能な限り濾過胞を生かしますが、メンテナンスができなくなったときが濾過胞の寿命です。2回目の線維柱帯切除術が必要になります。線維柱帯切除術は数年で機能が失われますので、繰り返し線維柱帯切除術を行い人生という長い時間眼圧を下げ続けて見える生活を守ります。「見える」というタスキを駅伝のように次の手術につないでいきます。

エクスプレスインプラント手術(プレートなしインプラント手術)

この手術は基本的に線維柱帯切除術と同じです。違いは、切開によるバイパスの代わりに細いチューブをバイパスにする点のみです。アルコン社のエクスプレス™(Express™ Glaucoma Filtration Device)という名称のチューブをインプラントします。エクスプレスを用いる利点は、線維柱帯切除術で房水流出の量が過剰になりがちであるのに対して、エクスプレスではチューブの流量が決まっているため過剰流出になりにくいという点です。つまり、線維柱帯切除術で最大の悩みである術後直後の「過剰濾過」「過度の低眼圧」という問題が起きにくくなります。これにより、術後の視力低下が起きにくく低下しても回復が速いという嬉しいメリットがあります。欠点は、チューブが詰まって眼圧が上がることがあることです。ぶどう膜炎のある目、狭隅角症の目、血管新生緑内障の目などは詰まりやすいため使用できません。エクスプレスが詰まったら、濾過胞再建術を行いエクスプレスを除去して線維柱帯切除術に切り替えます。

プレートありインプラント手術

「プレートありインプラント手術」は、線維柱帯切除術やエクスプレスインプラント手術が効きにくい、難症例に対して行います。血管新生緑内障、ぶどう膜炎による続発緑内障、何度も内眼手術を受けた目、傷を治す力が強い目(若年者など)などです。プレートには、「バルベルトインプラント」と「アーメドインプラント」の2種類が認可されています。いずれも長いチューブとその先端にプレートと呼ばれる孔の開いたタンクからなります。目の中に挿入したチューブから目の後方の壁に留置したプレートに房水を導きだします。この手術にも過剰濾過という問題があり、防ぐための工夫があります。術後の管理は線維柱帯切除術ほど複雑でたいへんではなく楽です。一番警戒すべき合併症は、チューブが目の外へ出てくることです。これを防ぐためにアイバンクから購入できる保存強膜をチューブの上にあてがっておきます。何年かするとプレートの流出孔に瘢痕組織が食い込んで塞いでしまうことがあり眼圧が再上昇します。その場合は、食い込んだ瘢痕組織を取り除きます。難症例でも確実に眼圧を下げることができるため濾過手術の最後の砦です。技術が必要で一定の緑内障手術実績が無いと使用が認められていないデバイスです。