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黄斑前膜手術

黄斑前膜手術とは?

黄斑前膜(黄斑上膜ともいいます)は、視力をつかさどる網膜の中心である黄斑の表面に膜が張り、その膜が絞り込むような力で黄斑を変形させ、分厚くなったり、皺がよったりします。症状は、ものがゆがんで見えたり(変視症、歪視)、大きく見えたり(大視症)、視力が低下します。お薬では治りません。硝子体手術で膜を取り除きます。27ゲージ小切開硝子体手術の浸透により安全な日帰り手術で治療が可能になっています。

黄斑前膜から有用な視力を守るためには~当院の考え

治療による視力の改善には2通りの考え方があります。ひとつは現在の低下した視力から何段階か改善したら良しとする考え方です。例えば、治療前の矯正視力が0.2で治療後に0.6に改善したら、4段階も改善したので良かったとする考え方です。これは、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫など重い黄斑疾患には適切な考え方です。ふたつめは、術後1.0以上の高い視力をめざす考え方です。例えば、白内障手術では、この考え方をします。白内障手術では黄斑や角膜に病気が無ければ矯正視力が1.0以上でます。つまり、白内障手術は矯正視力が1.0以上の正常な視力をめざす手術といえます。

では、黄斑前膜はどうでしょう?多くの報告で術前の視力が良いほど術後の視力が良いことが示されています。当たり前と言えば当たり前です。術後視力1.0以上をめざすなら術前視力1.0の間に手術を受けるのがベストと言うことになります。しかし、以前は硝子体手術自体が合併症のリスクがかなりあり、0.7以下に低下しないと手術をしない執刀医が多かったのです。では、現在はどうか?目に対する侵襲の低い27ゲージ小切開白内障手術が可能となり、熟練した術者が手術を行う限り安全性の高い手術になりました。私が専門とするOCTでみると視力が低下した黄斑前膜の症例は、黄斑部の肥厚や変形が強く、手術で膜をきれいに除去しても黄斑の厚みやかたちは元にもどりません。一方、視力がそれほど落ちていない黄斑前膜の目は黄斑の変形が軽く黄斑のかたちが正常に近い状態にもどりやすいのです。その結果、視力回復も速く、ものがゆがんで見える症状(変視症)も解消されやすいのです。当院では、多数の症例を長期に観察した結果から、黄斑前膜は視力が良い間に治療した方が1.0以上の視力を取り戻せる可能性が高いと考えています。黄斑前膜の治療は、単に視力が改善するだけではなく、矯正視力が1.0以上のゆがみの無い視力を取り戻すことを考える時代に入ったのではないでしょうか?

当院の手術成績(短期)

当院は開院して約1年と半年ですので長期の成績をお示しできませんが、短期の成績をお示しします。

開院後平成27年5月から平成28年7月までの14ヶ月に行った硝子体手術390例のうち153例が黄斑前膜の手術でした。そのうち、白内障が強い症例、黄斑前膜以外の黄斑疾患を併発した症例、中心付近の視野障害を有する緑内障の症例など黄斑前膜以外に視力に影響を及ぼす症例を除外した114眼の結果をお示しします。

この結果をどう読むかですが、手術前の視力が1.0以上の目は、手術後に100%1.0以上の良い視力になっていることがわかります。逆に、手術前の視力が0.3以下では、術後に視力は改善する目が多いが、1.0に到達する目は少なく、一部全く改善しない症例もあることがわかります。全体的に、術前の視力が良いほど術後視力は1.0以上になる可能性が高いことがわかります。

気になる手術合併症ですが、手術中に網膜に孔が開いた目が1眼(0.9%)ありました。しかし、レーザー光凝固と十分な硝子体切除でガスを使わずに網膜剥離は予防できています。他に、術後眼圧が高くなった目が3眼ありましたが適切な治療で正常化しました。

では、具体的にみていきましょう。まずは、術前視力が0.2と低かった症例です。厚い黄斑前膜により黄斑が肥厚し激しく変形しています。

手術前のOCT画像

手術を行って7ヶ月後です。黄斑の肥厚や変形は軽減しましたが、正常にはほど遠い状態です。正常な黄斑の特徴であるくぼみが回復していません。視力も0.2と改善を認めません。ゆがんで見える症状も続いています。

手術後7カ月

次に、手術前の視力が1.2と良いのですが、ゆがんで見えるのが辛くて来院された方です。黄斑の肥厚は強くありませんが、変形と皺が目立ちます。

手術前

手術の翌日です。皺は目立たなくなり、黄斑のくぼみもなめらかになっています。手術2日目に視力は1.2になりました。ゆがんで見える症状も日に日に良くなりました。変視症を調べる検査であるアムスラーチャートでは、3週間ほどで変視症がほぼ消失していました。

手術の翌日
  • 手術前

  • 手術後3週間

手術により期待できること

  • 01視力の改善

    当院の短期成績でお示しした通りほとんどの症例は手術により視力が改善します。改善の速さや程度は個人差があります。一方、視力1.0以上を正常な視力とすると、手術前の視力が良いほど手術により比較的速やかに1.0以上の視力を得ることができます。また、ほとんどの症例は運転免許証の必要視力である0.7以上の視力を得ることができますが、一部手術前の視力障害が強い目では短期的には0.7に届きません。

  • 02変視症の改善

    黄斑の皺や肥厚が減るにつれてゆがんで見える症状は軽減します。黄斑の肥厚が強いと術後1年経っても元の厚みにはもどらず、黄斑のくぼみも回復しないことが多く、このためか変視症が残ります。視力良好なほど、または黄斑の肥厚が軽度なほど変視症は解消されやすいといえます。

  • 03黄斑前膜の悪化を防ぐ

    黄斑前膜の進行の仕方については不明な点が多いのですが、当院では階段式に悪化すると考えています。すなわち、全く変わりが無い時期の後、急に炎症など何らかの原因で網膜の細胞が膜に集まり膜が肥厚し収縮して悪化するのです。手術により膜を広く除去すれば、細胞の集まる足場が無くなり、それ以上悪化しなくなります。

当院の黄斑前膜手術タイミングの目安

大まかに下記のうちいずれかを認めたら黄斑前膜手術を受けることをお勧めしています。

  • 黄斑前膜による視力低下が明らかな場合
  • ゆがんで見える場合
  • 黄斑のくぼみが消失している場合

白内障手術との同時手術

目安として50歳以上の方は硝子体手術を受けた目は多くの場合に急速に白内障が進行し後日早々に白内障手術が必要になります。このため、50歳以上の方は白内障手術と硝子体手術を同時に行います。すでに白内障手術を受けている方は硝子体手術だけになります。40代、30代でもまれに黄斑前膜を発症することがあります。近視の強い方や他の眼の病気がある方です。この場合は、まだ調節力の十分ある水晶体を温存して硝子体手術だけを行います。

黄斑前膜手術の方法は?

目安として50歳以上の方は硝子体手術を受けた目は多くの場合に急速に白内障が進行し後日早々に白内障手術が必要になります。このため、50歳以上の方は白内障手術と硝子体手術を同時に行います。すでに白内障手術を受けている方は硝子体手術だけになります。40代、30代でもまれに黄斑前膜を発症することがあります。近視の強い方や他の眼の病気がある方です。この場合は、まだ調節力の十分ある水晶体を温存して硝子体手術だけを行います。

  • 01白内障手術(必要な場合)

  • 02硝子体手術のセッティングを行います

    角膜から3~4 mm離れた白目の部位に3カ所治療用の0.4mm程度の小さな孔を開けトロカールという器具の出し入れのガイドシステムを設置します。当院では27ゲージのトロカールを用います。各トロカールには、それぞれ役割が有ります。

    • 目の中に人工房水を注ぎ込んで目の圧を保つためのチューブをつなぎます
    • 治療部位を明るく照らす照明器具の出し入れを行います
    • 実際に治療操作を行う器具の出し入れを行います
  • 03治療操作

    硝子体切除
    硝子体を70~80%程度切除して硝子体が後の操作の邪魔にならないようにします。
    膜剥離
    黄斑部の網膜表面に張っている膜を細いピンセットで丁寧に剥離して除去します。この際、網膜の一番表面にある内境界膜という厚さ5μmの膜も部分的に剥がれてきますので、一緒にきれいに剥離します。内境界膜を剥離した方が、皺が伸びやすく黄斑の回復が早いのです。内境界膜は透明であるためBBGと呼ばれる染色液で染めて可視化して安全に剥離します。
  • 04手術の終了

    トロカールを抜去します。黄斑前膜の場合は、自己閉鎖しますので、縫う必要はありません。

    硝子体手術の3つの創口の役割

手術時間と日帰り手術

硝子体手術単独で約15分、白内障との同時手術で約30分です。痛みは個人差がありますが、ほとんどありません。27ゲージ小切開硝子体手術は術後の炎症が軽く、痛みも少なく、日帰り手術に適しています。術後は、定期的診察、点眼(抗生剤と抗炎症薬)、1週間の生活指導を励行します。

黄斑前膜手術の合併症を防ぐには

硝子体手術の3つの技術進歩のおかげで黄斑前膜手術の合併症が激減しました。

  • 01小切開硝子体手術

    針の太さを示すゲージ

    硝子体手術で用いる器具の太さが、どんどん細くなりました。以前の主流の20ゲージから、23ゲージ、25ゲージ、27ゲージにまで細くなりました。当院は黄斑前膜手術には、一番細い27ゲージ小切開硝子体手術で行っています。単に器具が細くなっただけではなく、トロカールという器具の出し入れ用のガイドシステムが生み出されて安全に器具の出し入れができ、器具を抜いた時に弁が目の中の房水が外に漏れるのを防ぐことができるようになりました。これを小切開硝子体手術と総称しています。小切開硝子体手術の登場により日帰り硝子体手術の時代が始まったといえます。

  • 02高速カッター

    術中に網膜に孔が開く合併症の原因は、硝子体切除の時に硝子体が網膜を引っ張ることにあります。硝子体を切除するカッターの回転数が毎分7500になり硝子体が網膜を引っ張る力が弱くなりました。このため、網膜に孔が開くことはほとんど無くなりました。

  • 03広角観察システム

    眼底全体を見渡しながら硝子体切除などの操作を行うことができるようになりました。「木を見て森を見ず」の手術では無く、「森を見て木を見る」手術に進歩したのです。

    それでもごく稀に起こりうる合併症を挙げますが、どれも経験豊富な術者なら視力に影響することなく解決できます。

    手術における医師と患者の心構えは、合併症の可能性を理解し、生じたときに適切に対処する覚悟を持つことです。多くの合併症は適切な対処で対応できます。当院ではあらゆる面で細心の注意を払い合併症を防ぐことを心がけています。

稀な術中合併症(当院で対処できます)

  • 01網膜裂孔新生

    硝子体手術で最も起こりやすい合併症ですが、上記しました硝子体手術の進歩のお陰で激減しています。硝子体を切除しているときに、網膜の弱いところ(格子状変性など)が引っ張られて破れることです(網膜裂孔と言います)。

    対処法

    網膜裂孔のまわりをレーザー光凝固して固めます。術中に網膜剥離を生じたら眼内を空気置換して空気で抑えることもあります。

  • 02術後眼内炎

    術中に発生する急激な眼内の出血(脈絡膜という網膜の土台からの出血)です。以前の太い20ゲージ時代でもごく稀な合併症でした。トロカールを用いる小切開硝子体手術になり眼内の圧が安定しているためか、ほとんど見なくなりました。

    対処法

    即座に創を閉じ、強膜に切開を入れ脈絡膜下の出血を除去し、シリコンオイルを注入して眼底を抑えます。

稀な術後合併症(当院で対処できます)

  • 01裂孔原性網膜剥離

    創口に残った硝子体がはまりこんで網膜を引っ張って孔を開け網膜剥離に進展する合併症です。小切開硝子体手術になりほとんど見なくなりました。

    対処法

    硝子体手術の再手術により網膜剥離を治します。

  • 02術後眼内炎

    眼内の手術に共通する問題です。小切開硝子体手術は創口が小さくなり感染のリスクは減りました。しかし、抗生物質が効かない耐性菌が問題であり、眼内炎のリスクはわずかながらあります。眼内炎は早期発見が重要です。術後3日目以降の急な目の痛み、白目の充血の悪化があれば疑って、すぐ眼科受診が必要です。