048-681-0101

受付 8:30〜12:00 14:30〜18:00

ネット予約

網膜静脈閉塞症

静脈は血液を心臓へ返す血管で、水を海へ返す川のようなものです。
網膜の静脈が詰まると、川の流れがせき止められ決壊して住宅が水浸しになるように、静脈から網膜に血液成分が漏れ出し網膜出血が生じたり、網膜の中心である黄斑が浸水して腫れます。
これを黄斑浮腫といい網膜静脈閉塞症における視力低下の最大の原因です。

治療は、黄斑浮腫を解消することが目標になります。
現在の黄斑浮腫治療の第1選択は、抗VEGF薬という分子標的薬を眼の中へ注射する治療(硝子体注射)です。
VEGFとは、Vascular Endothelial Growth Factor(=血管内皮増殖因子)の略で、血管の水漏れを増やして黄斑浮腫を引き起こす働きをします。抗VEGF薬でVEGFを抑えると黄斑浮腫が軽快します。
黄斑浮腫が起きると、黄斑のものを見る神経細胞(=視細胞)が死んでいき不可逆的な視力低下をもたらしますので、できるだけ早く治療を開始して黄斑浮腫を解消する必要があります。
多くは抗VEGF薬の硝子体注射が効果的ですが、なかには抗VEGF薬が効きにくい症例や黄斑表面が膜により引っ張られている症例は、硝子体手術が必要になります(手術案内を参照ください)。

左:網膜中心静脈閉塞症の眼底写真、右:網膜中心静脈閉塞症のOCT画像(OCTアトラスより)

高血圧の方は要注意

網膜静脈閉塞症は、高血圧の高齢者に起きやすい病気です。 高血圧によって、動脈が硬くなり接している静脈を圧迫して血栓が生じやすくなるのです。
高血圧のほかに糖尿病、虚血性(動脈硬化性)心疾患などの全身疾患や緑内障がある場合にも、発症しやすくなります。 若年者でも起こることがあり、血管炎が関与することもありますが、原因が明らかでない症例が多く網膜中心静脈の先天性異常も疑われています。 約10-15%に両眼発症し糖尿病など全身疾患があるとより高確率で発症します。一方、若い方はほとんどが片眼発症です。

  • Central retinal vein occlusion in people aged 40 years or less: a review of 17 patients. Walters RF, Spalton DJ. Br J Ophthalmol. 1990 Jan;74(1):30-5.
  • Pollack A, Dottan S, Oliver M. The fellow eye in retinal vein occlusive disease. Ophthalmology. 1989 Jun;96(6):842-5

網膜静脈閉塞症には2タイプある

実は網膜静脈閉塞症には網膜中心静脈が詰まる網膜中心静脈閉塞症とその枝が詰まる網膜静脈分枝閉塞症があり、それぞれ経過と注意すべき点が異なります。見ていきましょう。

網膜中心静脈閉塞症

網膜血管は1本の網膜中心静脈に合流して眼の外へ出ていくので、これが詰まると血液は行き場が無くなり、血管からあふれ出して網膜は強く腫れ上がります。時に、視神経乳頭も腫れます。この病気の発症率は0.1-0.5%です。

  • Green WR, Chan CC, Hutchins GM, Terry JM. Central retinal vein occlusion: a prospective histopathologic study of 29 eyes in 28 cases. Trans Am Ophthalmol Soc. 1981;79:371-422.
  • Klein R, Klein BE, Moss SE, Meuer SM. The epidemiology of retinal vein occlusion: the Beaver Dam Eye Study. Trans Am Ophthalmol Soc. 2000;98:133-41; discussion 141-3.

網膜中心静脈閉塞症の治療

急性期の黄斑浮腫に対して
強い黄斑浮腫に対する抗VEGF薬治療が中心になります。
黄斑部虚血

網膜中心静脈閉塞症は網膜中心動脈の血流障害を伴うことがあり黄斑部に血液が十分に巡らなくなることがあります。黄斑虚血といいます。黄斑虚血が生じると視力障害は強くなり、視力予後も良くないとされています。抗VEGF薬治療とともに抗凝固剤や循環改善薬などによる治療を行います。抗VEGF薬治療は、時に虚血を強めることがありますので、黄斑の虚血状態をモニターして使用することが望ましいです。はんがい眼科が導入しているレーザースペックルフローグラフィー 「LSFG-NAVI」(「外来」ページ参照)は、黄斑虚血のモニターに適しています。

無灌流領域形成

網膜の広い範囲の毛細血管に血液が巡らなくなることをいいます。
この結果、新しい血管を作る働きがあるVEGFが大量につくられ、網膜に新しい血管(=網膜新生血管)が生えてきて破れて硝子体出血を引き起こしたり、目の前方にある目の中の水の出口である隅角に新生血管が生えて新生血管緑内障を引き起こしたりするなど失明のリスクのある重大な合併症の原因となります。これら合併症を予防するためには、蛍光眼底造影をこまめに行い無灌流領域形成を早めに捉え、汎網膜光凝固術を行います。蛍光眼底造影は、稀ながらアナフィラキシーショックを起こすリスクが知られています。はんがい眼科では、このような侵襲の無い広角OCTアンギオグラフィー「PLEX Elite 9000 SS-OCT」(「外来」ページ参照)を導入して変化をモニターする努力を行っています。

血管新生緑内障

最も難治な緑内障として知られています。100日緑内障とも言われ、無灌流領域が形成されると急速に進んできます。
虹彩と、隅角に新生血管が生えてきて、角膜と虹彩の間のスペース(=前房)に出血したり(=前房出血)、隅角がどんどん癒着してふさがっていくため、とてつもなく高い眼圧になります。
視野や視力を失っていくだけではなく、目の痛みや頭痛に苦しみます。無灌流領域を捉え汎網膜光凝固術を行い予防することが何より重要です。重症になると汎網膜光凝固術と緑内障手術がともに必要になります。これに硝子体出血を伴うと光凝固術ができないため硝子体手術を行い術中汎網膜光凝固術が必要になります。
はんがい眼科では、硝子体手術+緑内障手術同時手術を行い術後の高眼圧で視神経乳頭が萎縮するのを防ぎます。
網膜中心静脈閉塞症は、眼底疾患と緑内障を含む総合的な診療を必要とします。

網膜静脈分枝閉塞症

1本しかない網膜中心静脈は網膜に入ってくると枝分かれしますが、この枝が詰まる病気です。
網膜の動脈の枝と静脈の枝が交差する部位で、硬い動脈が柔らかい静脈を押し続けた結果、静脈がたわむように変形して血栓ができて閉塞します。
血圧が高いほど動脈は硬くなりますので、網膜静脈分枝閉塞症は起きやすくなります。

網膜静脈分枝閉塞症の治療

急性期
網膜中心静脈閉塞症と同様に黄斑浮腫に対する抗VEGF薬治療が中心になります。
硝子体出血
詰まった静脈の枝が担当する範囲の網膜で毛細血管や細い血管が詰まって血液が巡らなくなります。無灌流領域形成といいます。これが形成されると新しい血管をつくる働きがあるVEGFが作られて、網膜表面から硝子体に新しい血管が生えます。
年齢的な変化として硝子体が網膜から離れるときに、この新しい血管が引っ張られて破れ硝子体出血を引き起こします。
硝子体出血を生じると、墨を垂らしたようなものが見えた後に見えなくなります。治療は硝子体手術で硝子体出血を取り除きます。
裂孔原性網膜剥離
血液が巡らなくなった部分の網膜は内側半分が消失して薄くなります。年齢的な変化として硝子体が網膜から離れるときに、この薄くなった網膜が引っ張られて孔が開き網膜剥離が起きます。硝子体出血を取り除いたときに網膜剥離が見つかることもあります。治療は、裂孔原性網膜剥離の治療と同じで硝子体手術により治します。